ミニマリストのための Ruby on Rails
今日は、Rails 8 が Web アプリケーション開発者に提案する、「ミニマムな技術スタック」の紹介と、その技術スタックへの愛を語ります。
ミニマム、だが強力な Rails
2024年11月にリリースされた Rails 8 には、rails new で生成したアプリを「そのまま」本番環境で運用できるように、数々の工夫が凝らされています。
- SQLite3 への書き込みが競合しても、エラー(
SQLite3::BusyException) がほぼ発生しなくなった - SQLite3 をバックエンドとした、非同期ジョブ(Solid Queue)やキャッシュ(Solid Cache)
- kamal による1コマンドデプロイ
- TLS 証明書の生成・管理、TLS 終端をになう kamal-proxy
アプリケーション開発者のやることは至って単純。rails new して、アプリケーションコードを書き、kamal deploy で VPS に本番向けアプリとしてデプロイ。
かつては、チュートリアルや個人の検証・習作くらいでしか許されなかった行動でしょう。しかしいまや、このミニマムな技術スタックは「ビジネスができる」レベルまで昇華したのです。
この革命的な進化を熱く語っているのが、 Supercharge the One Person Framework with SQLite: Rails World 2024 ↗ です。 YassyLab 株式会社様による日本語訳 ↗ もあります。
改めてミニマムな技術スタックを俯瞰
「Ruby on Rails 8 流」な技術スタックを、改めてみてみましょう。
- フレームワーク: Ruby on Rails
- データベース: SQLite3
- コンテナオーケストレーション: Docker
- デプロイ: kamal
- TLS 対応: kamal-proxy
- インフラ: Linux サーバーが1台あれば何でもOK
これを以降 「Minimum Rails」とでも呼ぶことにしましょう。筆者はこれに加えて、
- Node.js を持ち込まない。フロントエンドは Hotwire で書いて、Asset Pipeline は Propshaft + Importmap を採用
app/formsやapp/servicesといった Rails 標準にない独自レイヤーを設けない- ドメインロジックは ActiveRecord と密結合させて
app/modelsに集約
という縛りをトッピングして開発するのが大好きです。
Vanilla Rails is plenty ↗ や A vanilla Rails stack is plenty ↗ の影響を強く受けています。
ミニマムだと何が嬉しいのか?
Rails 8 の提案する「Minimum Rails」は開発者にどのような幸せをもたらすのでしょうか?筆者が実感しているメリットを挙げましょう。
徹頭徹尾アプリケーション開発に集中できる
ミドルウェア、インフラ、デプロイ、これらアプリケーションを開発運用するうえで欠かせない周辺業務について、Ruby on Rails が用意した解をそのまま採用できます。
われわれがやるべきことは app/models や app/controllers を書くだけ。
データベースアクセスが早すぎる
SQLite3 を除く RDBMS へのクエリ発行はほぼ「TCP/IP 通信」でしょう。一方、SQLite3 の場合は「ファイル I/O」です。 必然的にオーダー違いの速度差が生じます。
普通にコード書いているだけなのに、非 SQLite3 アプリケーションより数倍早くレスポンスが返ってくる、みたいなことが、普通に起きます。 ローカル開発だと、うっかりN+1問題を見落しかねない爆速さ。
インフラコストの安さ
かつて、小規模な Rails アプリと言えば Heroku に代表されるような PaaS で、必要な周辺ミドルウェア(RDBMS や Key-Value Store など)とセットで利用するのが、鉄板の選択肢でした。
一方で、「Minimum Rails」においては、Linux サーバー1台でフルスタックな Web アプリケーションを動かせますから、PaaS は不要になります。 VPS を提供する IaaS は豊富にあり、比較的安価で、価格も安定しています。(あくまで、比較的、ではありますが)
2026年現在、筆者が注目しているコストパフォーマンスに優れた VPS サービスを紹介します。
これらのサービスを賢く利用することで、お得に開発・運用ができます。
インフラメンテナンスコストの削減
「Minimum Rails」は Linux サーバー上で Docker コンテナが動いているだけなので、Linux や Docker の一般的な知識でメンテナンスできます。 個人的には、ブラックボックスになりがちな Platform 独自の制約やお作法を学ぶ必要がない点を気に入っています。
一方で、各種サーバー設定やセキュリティ確保を自分で完結することが求められるので、むしろインフラのメンテナンスは PaaS に任せた方がいい、という意見も一理あります。一長一短ですね。
まとめ
以上、Ruby on Rails 8 が切り開いた「ミニマムな Web アプリケーション」についての紹介でした。 全体的に Rails を褒めちぎる内容になっていますが、実際に「Minimum Rails」でビジネスをやるなら、解決すべき課題が多いのもまた事実。
- SQLite3 本番で動かせるって本当?いうてアクセス数多くなったらパンクするでしょ?そもそもバックアップはどうするの?
- AZ 分散しないシングルサーバーとか何時代だよ
- Hotwire はクセが強すぎる。フロントエンドはさすがに Node.js の資産を活用すべきじゃない?
とか、色々な反論・懸念が思いつきます。これらについては、個別の論点として別の記事で深堀りする所存です。
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